2021-08-18 Phonétique, 連続ドラマを見始める、オペラと振付家の関係
フランス語の母音は11種類もあって(日本語はあいうえおの5つといわれている)使い分けが日本語よりは複雑だ。普通は口のなかの図をもとに、舌の位置や唇の形、鼻に息を通すかどうかというような教え方がされる。
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今日はその母音を口の中の温度によって発音し分けるという方法があるのだと聞いた。
口の中の要素を瞬間的に細かく変化させることを覚えるよりも、口の中をどのくらいの速度で空気が駆け抜けて涼しく感じたり、またはとどまった空気が口腔を温めるか、または舌がどの範囲でどういう時間上顎や歯にふれるのか、それによって異なる微妙な温度の差を覚えたほうがはやいということらしい。
私は文字に色が見える(共感覚)が、口の中や喉を通過する空気や触れ合う肉や歯の感触や温度とその色の決定が無関係ではないと昔から考えていたので、このメソッドにとても興味がある。 詳しく知りたいけれど私の検索能力では探し出せなかったので、続報を聞きたいところ。
日本語を教えていて気づいたのだけれど、私たちは「かきくけこ」と「がぎぐげご」、「はひふへほ」と「ぱぴぷぺぽ」はお隣にある関係だと思っているけれど、フランスのひとに「かきくけこが濁っているからがぎぐげごでしょ」という教え方をしても概念が違うので通用しない。
それぞれは舌の位置や唇が閉じるか開いたままかなど、まったく違うカテゴリーに属しているからだ。
「ばびぶべぼ」と「ぱぴぷぺぽ」はお隣かもしれないけれど(ほぼ唇や口の中の形が同じだから、発音でもbをpと読むことは英語でもフランス後でもよくある)「はひふへほ」は全然仲間だと思えないのだろう(そもそもフランス語はhをほとんど発音しないということもあるけれどそれはまた別の話として)。
あと、小さい「っ」や「ん」も日本人は全然違う口の形で発音するいくつかの「っ」や「ん」を持っているのに、全部同じ文字で表している。
日本語を教えるまで、こんなこと考えたことがなかった。
夏休みフランス語強化月間に入ってから挫折ばかり味わっているのだが、ずっと避けてきていた連続ドラマを見てみるということを始めてみる。
なぜ避けてきていたかというと、かなり興味がないからです。
ドラマを見たり漫画を読んだりという勉強方法はよく身につくはずなのでやってみるべきだったのだけれど何しろ興味のわかないものへのアレルギーがひどくて…(言い訳)。
なぜ語学学習と自分の知的好奇心を同時に満たそうとするのだ、わたしよ。だから学習教材がみつからないのだぞ(叱咤)。自分の自己紹介もそこそこにしかできないときに、美術評論を読もうとするのはやめろ。字幕無しでフランス映画を解析しようとするのもやめておけ(7年前の自分に言いたい)。
何を見ようか迷うとまたどうしてもあれこれ調べて延々と迷ってしまうのでNetflixで少し前に日本でも話題になった『エミリー、パリへ行く』を見てみている。パリにきて言葉に苦労する主人公の話だから私にぴったりではないか。 パリに来たエミリーはchambre de bonne(昔はお手伝いさんを寝泊まりさせる部屋だった。屋根に近いところなので暑いけど素敵な丸窓だったり景色がいいことが多いし安いので留学生が良く住むイメージ)に住むのだけれど、一休みしたときにchambre de bonneのことを話題にしているツイートを見かけてびっくりした。そういう偶然があるとなんだか嬉しくなる。
が、エミリーのフランス語があえて英語なまりになっていて、それを聞き取るのが大変なのでもしかしたら他のドラマにするかも…。
https://youtu.be/g2c4LrskJg0
始めの男性のソロのシーンは息を浅くして見てしまった。
振付も面白かったのだけれど、ひとつひとつの呼吸や動きが楔を打つようで、目を離すことができなかった。
無機的なものと有機的な感覚が同時にありながら、視覚的には身体というものの躍動があって、内側にはわたしたちにはわからないロジックのようなものが流れている、統制ともがき、せめぎ合って、激しく中和されているような。時々美術館にある大きな立像がこんな風に動いていないのに激しく熱を帯びているようにみえることがある。
ほかのシーンの振付は、シェルカウイってこんなにバレエ的な動きを多用する人だっけ?というどうでも良いことばかり考えてしまった。
あとこれだけの人と大きな舞台と装置が使えるのに、紙芝居みたいな平面的な舞台の使い方をするんだな。
セリフがあるとはいえ、抽象的なシーンの多いダンス2022-23でこういう社会的な訴えを直接的にするのはなかなか難しいものだなというふうにも感じた。もう少し婉曲な、というか絵や言葉で見せるよりも身体の震えのようなもので見せるほうが彼はうまいような気がする。